2008年10月24日
こんなご相談がQ③~自己都合退職後に在職中の不正発覚 懲戒解雇になるんでしょうか?(10/24セミナー受講の方お疲れさまでした)
【質問】このほど、4月末日付けで自己都合退職した営業社員(仮にA)が、在職中に会社の金を横領していたことが判明しました。
当社としては、まだAに自己都合退職による退職金を支払っておりませんので、Aを懲戒解雇処分とし、当社の退職金規程に基づき、退職金を自己都合退職の場合よりも減額したいのですが、
可能でしょうか。
当社の規定では、金銭の横領は懲戒解雇事由に該当し、懲戒解雇の場合には、退職金を減額する旨規定しています。
ご質問は、(1)退職後に在職中の不正行為が判明した場合にさかのぼって懲戒解雇とすることが可能か(2)自己都合退職とした後に不正行為を理由に退職金を減額することが可能か - の2点です。
まず、(1)については、懲戒解雇など会社の懲戒処分権の行使は、労働者との間に雇用関係があることを前提として行われるものですから、すでに退職し、雇用関係がなくなっている者に対して、懲戒解雇などの懲戒処分を行うことはできません。
判例でも、雇用関係が終了している以上、その後に懲戒解雇の意思表示をしても、法律上無意味であるとしたものがあります(サンレイシッピング事件 平2.9.17 東京地判)。
次に、(2)についてですが、退職金について、懲戒解雇などの場合に係る不支給条項や減額条項を定めることは可能です。ただし、不支給・減額条項に該当するからといって、必ずしも、退職金の不支給や減額が認められるわけではありません。
判例では、(退職金は、・・・功労報償的性格を全く否定することはできないから、・・・当該従業員にそれまでの功労を抹消あるいは減殺するような背信的な事由が生じた場合には、退職金の額を減額し、あるいはこれを支給しないものとする旨の規定を置くことも許されると解される」とされているからです(センメイ商事事件 平11.1.22 大阪地判)
それでは、退職後に懲戒解雇事由に当たる行為が判明した場合も、自己都合退職による退職金額を支払わなければならないのでしょうか。
この点については、まず、御社の退職金規定に定める退職金の減額事由が、「懲戒解雇されたとき」のみである場合には、前述のように、懲戒解雇自体が認められないことから、原則として退職金の減額は認められないことになります。
ところで、御社では、未だAさんに自己都合退職による退職金を支払っていないということです。
判例では、「退職した者でも退職金支給日までの間に、在職中の行為について、懲戒解雇事由に該当する行為が発見された者については退職金を支給しない」旨の規定を根拠に退職金を不支給とした取り扱いを認めたもの(大電事件 平11.11.29 大阪地判)があります。
したがって、前述のような退職金不支給規定あるいは「退職金の支給を受けた後であっても、懲戒解雇事由に該当する行為が判明した場合には、当該従業員は退職金を返還しなければならない」など、退職金返還規定がある場合には、この規定を根拠に退職金の不支給あるいは退職金の返還を求めることが可能なケースもあります。
ただし、退職後に退職金を減額する場合について、判例では、「退職金金額が一度算定された後に適用されるような場合には、退職従業員の法的安定性を害する要因となることから、・・・背信性が極めて強い場合に限りその適用を許すのが妥当である」とされています(ベニス事件 平7.9.29 東京地判)
懲戒解雇できないが退職金減額が可能な場合も
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